居宅介護住宅改修費の概要

改修内容や利用条件、改修費用などについて。

要支援 要介護
更新日:2020/01/18
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居宅介護住宅改修費とは

居宅介護住宅改修費は、利用者の日常生活に必要となる住宅改修を、介護保険を使って実施することができるサービスです。

※このサービスでは工事前の事前申請が必要となります。また、ケアマネジャー等に「住宅改修理由書」を作成してもらう必要があるので、住宅改修を考えている方はまずは担当のケアマネジャー(または地域包括支援センター)に相談してください。

※要介護者向けのサービスは「居宅介護住宅改修費」、要支援者向けのサービスは「介護予防住宅改修費」といいます。(以下、この2つを合わせて「居宅介護住宅改修費」と表記します)

サービスの対象者

居宅介護住宅改修費のサービスは、「要支援1・2」または「要介護1~5」の認定を受けた人が対象となります。

対象となる住宅

このサービスの対象となる住宅は、利用者の自宅(住民票に記載されている住所)に限られます。

例えば、親を呼び寄せて介護を行う場合は、介護を行う住宅に親の住民票を移した上で、住宅改修の事前申請を行うことになります。

※利用者の自宅が賃貸住宅の場合は、住宅所有者の承諾がある場合に改修が可能となります。(ただし、退去時の原状回復費用については給付の対象外となります)

居宅介護住宅改修費の対象となる工事内容

このサービスでは、次の種類の改修工事が保険給付の対象となります。

介護保険適用の改修[上段] 説明[下段]
手すりの取付け 階段、廊下、トイレ、浴室などに手すりを取り付ける工事
段差や傾斜の解消 スロープの設置や床のかさ上げ工事など
滑りの防止および移動の円滑化等のための床材の変更 畳敷きからフローリング等に変更する工事、浴室の床を滑りにくい材質に変更する工事、階段に滑り止めを取り付ける工事など
引き戸等への扉の取替え 開き戸を引き戸等に取り替える工事、扉の撤去、吊元の交換、ドアノブの変更など
洋式便器等への便器の取替え 和式便器を洋式便器に取り替える工事
上記の改修に付帯して必要となる工事 上記の各種改修に付帯する必要最低限の工事(下地補強や給排水設備工事など)

※新築中や増築中の改修は支給の対象になりません。(竣工日以降の改修は対象になります)

改修費用に関して

利用限度額

改修費の利用限度額は、原則1回限りで「20万円」までとなります。(後述する「リセット」に該当する場合は再度支給を受けられます)

  • ※限度額を超えた分は全額自己負担となります。
  • ※限度額の範囲内であれば、複数回に分けて利用することができます。
  • ※どの要介護度であっても限度額は同額となります。

なお、この利用限度額は区分支給限度額とは別枠で設けられています。

自己負担額

利用者が支払う自己負担額は、改修費用の1~3割です。例えば80,000円の改修を実施する場合、利用者負担割合が「1割」の人は8,000円を自己負担することで改修を行うことができます。この場合、利用可能残額は120,000円となります。

支払い方法

改修費の支払い方法には、「償還払い」と「受領委任払い」の2方式があります。

償還払い
利用者が改修費用の全額を事業者に支払い、その後の申請によって介護保険給付分(改修費用の7~9割)が利用者に払い戻されます。(指定口座に振り込まれます)
受領委任払い
利用者が改修費用の自己負担分(1~3割)を事業者に支払い、申請によって介護保険給付分(改修費用の7~9割)が事業者に支給されます。
※給付分の受領権限を事業者に委任することになります。
※この方式が利用できるのは「受領委任払い取扱事業者」で改修する場合に限ります。

※「受領委任払い」については、市区町村により扱いが異なるようです(独自の要件を設けている場合もあります)。詳しくは市区町村のWebサイトなどでご確認ください。

転居リセットと3段階リセット

住宅改修の「利用限度額の枠(20万円)」は、原則、生涯に1度だけ与えられます。しかし、次の条件に該当する場合は、再度「利用限度額の枠」が設定されて支給を受けられるようになります。

転居リセット

利用者が転居した場合(住民票を移した場合)は、利用限度額の枠が新規に設定され、転居先の住宅で住宅改修費の支給を受けられます。(これを「転居リセット」といいます)

  • ※転居の回数に制限はありません。
  • ※元の住宅(住宅改修費の支給を受けたことがある住宅)に戻った場合は転居リセットは行われず、「元の住宅における支給状況」が復活することになります。(元の住宅に「利用可能残額」がある場合はそれが継承されます)

3段階リセット

利用者の要介護度が大幅に上がった場合は、利用限度額の枠が新規に設定され、利用者の状態に合わせた住宅改修を新たに実施することができます。(これを「3段階リセット」といいます)

具体的には、下記の「介護の必要の程度」の段階が、「最初の住宅改修を行った時点」の段階を基準として「3段階以上」上がっている場合に、「3段階リセット」を実施することができます。

「介護の必要の程度」の段階[上段] 対応する要介護度[下段]
第6段階 要介護5
第5段階 要介護4
第4段階 要介護3
第3段階 要介護2
第2段階 要支援2と要介護1
第1段階 要支援1

※住宅改修においては、「要支援2」と「要介護1」は同じ段階とみなされます。

3段階の上昇を要介護度で表すと次のようになります
  • 「要支援1」 → 「要介護3以上」
  • 「要支援2」 → 「要介護4以上」
  • 「要介護1」 → 「要介護4以上」
  • 「要介護2」 → 「要介護5」
  • 「要介護3以上」 → 3段階の上げ幅がないので対象外
  • ※3段階リセットが適用されるのは「1回限り」です。
  • ※3段階リセットは、条件(3段階の上昇)を満たしている間に実施する必要があります。要介護度が下がって条件外になると、リセットが適用されなくなるので注意が必要です。

手順の概要

居宅介護住宅改修費を利用するには、工事前と工事後に計2回の申請が必要となります。

  1. 住宅改修について担当のケアマネジャー、または地域包括支援センターに相談
  2. 事業者を選択し見積りを依頼
  3. 市区町村の窓口へ事前申請(審査に14日程度かかる)
  4. 市区町村の許可を得てから工事を開始
  5. 工事の実施
  6. 工事の完了後に事業者へ支払い
  7. 市区町村の窓口へ支給申請
  8. 市区町村が住宅改修費を支給(費用の7~9割)
著者情報

高橋 永治(たかはし えいじ)

介護情報サイト「介護Ways」の運営者。

1996年、自身にとって初となるWebサイトを立ち上げ、98年からは企業向けのWebサイト制作サービスを開始。現在は企業サイトの運営管理、および複数の自サイトの運営管理を行っている。

親が認知症になってからは介護の世界に関心を持ち始め、介護保険制度について調べていくうちに「この複雑で分かりにくい情報を整理したい」という思いに駆られ、10ヶ月に渡る制作期間を経て2020年1月に介護Waysを公開。「簡潔に分かりやすく」がモットー。