介護老人保健施設(老健)の概要

サービス内容や入所条件、入所費用などについて。

要介護
更新日:2021/06/03
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介護老人保健施設(老健)とは

介護老人保健施設(老健)は、主にリハビリや医療的なケアを必要とする要介護者を受け入れ、入浴や食事等の介護、専門職員によるリハビリテーション、療養上の世話などを行う公的施設です。

この施設は「病院と自宅の中間的な施設」として位置づけられていて、病院を退院した要介護者が一時的に滞在し、在宅復帰を目指してリハビリなどを行うことが主な目的となります。

そのため、入所可能な期間は基本「3~6ヶ月」、長くても「1年」程度までとなっています。(3ヶ月ごとに入所継続の可否が判断されます)

基本的に「認知症」や「医療的ケア」に対応していますが、在宅復帰を目的としているため「終身利用」の対象にはなりません。(施設によっては「重度の要介護」にも対応しています)

入所対象者

65歳以上で「要介護1~5」の認定を受けている人のうち、リハビリや医療ケアを必要とし、病状が安定している人が対象となります。

概算費用

介護老人保健施設は公的な介護保険施設のため、初期費用は不要で月額の費用も低めに抑えられています。また、「特定入所者介護サービス費」の対象施設となるため、低所得の人は食事代と部屋代の負担が軽減されます。(条件を満たしている場合)

初期費用 なし
月額費用 7万円~17万円

介護老人保健施設の利用には次の月額費用がかかります。

施設サービス費 + 食費・居住費 + 日常生活費・他

施設サービス費
介護サービスにかかる費用のことで、利用者は1~3割を自己負担します。この費用は、利用者の要介護度と部屋のタイプによって変動します。
食費・居住費
食費と居住費(部屋代)は全額自己負担となります。居住費は部屋のタイプによって変動します。
日常生活費・他
日用品代、理美容代、レクリエーション費などが必要に応じてかかります。

※おむつ代は「施設サービス費」に含まれるため、別途負担はありません。

部屋のタイプ

部屋のタイプは次の4つです。(どのタイプが利用できるかは施設により異なります)

従来型個室
一般的な個室
多床室
2~4人で利用する相部屋
ユニット型個室
ユニットケアを導入している個室
ユニット型個室的多床室
ユニットケアを導入している個室風の多床室(完全な個室ではなく、多床室を間仕切りで区切ったスペースになります)

ユニットケアとは、10人ほどの利用者で1つのユニットを形成し、各ユニット単位で共同生活を送る仕組みのことです。共用スペース(リビング等)がユニットごとに設置され、それに隣接する形で各部屋が配置されています。

  • ※1人あたりの床面積の規定は「8㎡(約5畳)以上」となります。
  • ※介護老人保健施設では「多床室」が多くなります。

介護老人保健施設のサービス内容

介護老人保健施設では、主に次のサービスを受けることができます。

サービス内容
  • 食事の提供
  • 食事、排泄、入浴などの介助
  • 生活相談
  • 生活支援(掃除、洗濯、等)
  • 専門職員(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)によるリハビリテーション
  • 医療的なケア
  • 健康管理(健康状態の確認、服薬管理、等)
  • 療養上の世話
  • レクリエーション
  • 緊急時の対応

※この施設で提供される介護サービスのことを「介護保健施設サービス」といいます。

施設サービス費の目安

介護老人保健施設の1日あたりの基本料金(施設サービス費)は次のようになります。

※部屋のタイプや利用者の要介護度により料金は異なります。

施設サービス費(基本型)
部屋のタイプ[上段] 自己負担額(1日)[下段]
ユニット型個室
ユニット型個室的多床室
要介護1
796円
要介護2
841円
要介護3
903円
要介護4
956円
要介護5
1,009円
従来型個室
要介護1
714円
要介護2
759円
要介護3
821円
要介護4
874円
要介護5
925円
多床室
要介護1
788円
要介護2
836円
要介護3
898円
要介護4
949円
要介護5
1,003円

※上記は「基本型」の介護老人保健施設における料金となります。他に「在宅強化型(少し高め)」と「その他型(少し安め)」の料金が設定されています。

食事代や部屋代などは介護保険の適用外となるので、それらの費用は自費で負担する必要があります。(費用の目安は基準費用額をご覧ください)

  • ※上記の自己負担額は利用者負担割合が「1割」の場合の金額です。
  • ※基本料金の他に複数の加算項目が設定されています。
  • ※サービスを利用する地域(地域区分)により利用料金は異なります。

料金体系の違いについて

介護老人保健施設の料金体系は、在宅復帰にどの程度貢献しているかの指標(在宅復帰率、ベッドの回転率、専門職員の配置割合、その他)により次の3つに分けられています。

在宅強化型(超強化型・在宅強化型)
在宅復帰への取り組みについて高レベルの要件を満たしている老健。「基本型」と比較して施設サービス費は少し高くなります。
基本型(加算型・基本型)
在宅復帰への取り組みについて一定の要件を満たしている老健。
その他型
在宅復帰への取り組みについて上記の2つに該当しない老健。「基本型」と比較して施設サービス費は少し安くなります。

上記を細かく分けると次の5段階になり、この区分によって加算項目の内容が変わってきます。(超強化型に向かうほど利用料金の総額は高くなります)

[1.超強化型・2.在宅強化型][3.加算型・4.基本型][5.その他型]

食事代と部屋代を含めた料金のサンプル

参考までに、食事代と部屋代を含めた月額を次の条件で計算してみました。(1ヶ月=30日で計算)

  • 施設の料金体系:基本型
  • 部屋のタイプ:多床室
  • 食事代と部屋代には「基準費用額」を使用

計算式:施設サービス費(1割負担) + 食事代と部屋代 = 合計額
(食事代 = 43,350円/月、部屋代 = 11,310円/月)

利用者の要介護度[上段] 自己負担額(月額)[下段]
要介護1 23,640円 + 54,660円 = 78,300円
要介護2 25,080円 + 54,660円 = 79,740円
要介護3 26,940円 + 54,660円 = 81,600円
要介護4 28,470円 + 54,660円 = 83,130円
要介護5 30,090円 + 54,660円 = 84,750円

以下は「特定入所者介護サービス費(第2段階)」の適用を受けた場合の月額のサンプルです。

(第2段階:食事代 = 11,700円/月、部屋代 = 11,100円/月)

特定入所者介護サービス費(第2段階)の適用を受けた場合
利用者の要介護度[上段] 自己負担額(月額)[下段]
要介護1 23,640円 + 22,800円 = 46,440円
要介護2 25,080円 + 22,800円 = 47,880円
要介護3 26,940円 + 22,800円 = 49,740円
要介護4 28,470円 + 22,800円 = 51,270円
要介護5 30,090円 + 22,800円 = 52,890円

高額介護サービス費」の適用を受けた場合は、更に安くなる可能性があります。

※上記の金額は目安としてご覧ください。(各種の加算費用、理美容代、日用品代などは含まれていません)

老人保健施設の種類

老人保健施設には次の2種類があります。

介護老人保健施設(従来型老健)
在宅復帰を目的とした老人保健施設(このページで紹介している施設です)。
療養型介護老人保健施設(新型老健)
医療機能を強化した老人保健施設(このサイトでは扱っていません)。ターミナルケア(終末期のケア)や看取りにも対応しています。
※この施設は、廃止が決定された「介護療養型医療施設」の受け皿として2008年に創設されました。
著者情報

高橋 永治(たかはし えいじ)

介護情報サイト「介護Ways」の運営者。

1996年、自身にとって初となるWebサイトを立ち上げ、98年からは企業向けのWebサイト制作サービスを開始。現在は企業サイトの運営管理、および複数の自サイトの運営管理を行っている。

親が認知症になってからは介護の世界に関心を持ち始め、介護保険制度について調べていくうちに「この複雑で分かりにくい情報を整理したい」という思いに駆られ、10ヶ月に渡る制作期間を経て2020年1月に介護Waysを公開。「簡潔に分かりやすく」がモットー。