介護保険と居住地の関係

住所地と居住地が異なる場合の利用方法や住所地特例について。

更新日:2020/01/18
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保険者と被保険者の関係

介護保険は、市区町村が保険者(運営主体)となって運営されています。

そして、保険者と被保険者(保険の利用者)の関係は、住民票の住所地によって紐づけられています。

例えば、「A市」に住民票を置いている「Bさん」の場合、A市はBさんの保険者であり、BさんはA市の被保険者である、ということになります。

要介護認定の申請先

「要介護認定」の申請は、住民票を置いている市区町村に対して行う必要があります。

地域包括支援センター

相談の窓口となる「地域包括支援センター」は、それぞれ担当する地域が決まっています。

介護に関する具体的な相談等については、原則、住民票を置いている地域の「地域包括支援センター」を利用する必要があります。

※地域包括支援センターは、市区町村内に複数設置されているケースが多いです。各センターの担当地域については、市区町村のWebサイト(福祉関係のページ)で調べるか、役所に直接問い合わせて確認してください。

介護サービスの利用地域について

介護保険サービスのうち、介護給付の「居宅サービス」と「施設サービス」、および予防給付の「介護予防サービス」については、全国どこに居ても同一基準のサービスを利用することが可能です。(利用地域は住民票の住所地に縛られません)

総合事業」についても、全国どこに居ても利用することが可能です。ただし、サービス内容については保険者(住民票を置いている市区町村)が定めたものになります。

「地域密着型」のサービスについては、原則その市区町村に住民票がある人しか利用できません。また、「住宅改修」の支給についても、住民票の住所地となる住宅のみが対象となります。

住所地と居住地が異なる場合

住民票の「住所地」と実際に住んでいる「居住地」が異なる場合、介護サービスの利用はどのような手順で進められるのか。気になったので少し調べてみました。

※住民票を置いている住まいを「住所地」、実際に住んでいる住まいを「居住地」として説明します。

新規の要介護認定申請

要介護認定の申請は、「住所地」の市区町村に対して行います。

新規の要介護認定申請の場合、認定調査(訪問調査)は「住所地」の市区町村が行うことになっています。しかし、居住地が遠方である場合には、「住所地」の市区町村から「居住地」の市区町村に対して認定調査を嘱託できるとされています。

※つまり、遠方に住んでいる場合は、申請は「住所地」の市区町村に行うものの、認定調査は「居住地」の市区町村が行う、ということになります。

このほか、都道府県が指定した「指定市町村事務受託法人」に委託される場合もあります。

要介護認定の更新・区分変更

要介護認定の更新・区分変更の申請も、「住所地」の市区町村に対して行います。

更新・区分変更を行う際の認定調査は、「居住地」の「居宅介護支援事業所」や「介護保険施設」等に委託できるとされています。

要介護者のサービス利用

要介護者が「居宅サービス」を利用する場合は、まずは「居住地」にてケアマネジャーを探します。その後、ケアマネジャーとの契約~ケアマネジメントを経て、居住地での介護サービスの利用を開始することになります。

※ケアマネジャーは「居住地」の「地域包括支援センター」で紹介してもらえます。または、自分で「居宅介護支援事業所」を探します。

「施設サービス」の場合は、全国の中から希望に合った介護保険施設を探し、施設との契約~入所という流れになります。

要支援者のサービス利用

要支援者のケアマネジメントは、基本「住所地」の「地域包括支援センター」が行うことになっていますが、必要に応じてその業務を「居宅介護支援事業所」に委託できるとされています。

居住地が遠方である場合は、委託を受けた「(居住地の)居宅介護支援事業所」のケアマネジャーがケアマネジメントを行い、その後、居住地にて「介護予防サービス」や「総合事業」の利用を開始することになります。

相談窓口

介護に関する具体的な相談は、「住所地」の市区町村、または「住所地」の「地域包括支援センター」で行うのが基本です。(行くのが難しい場合は電話で)

ですが、介護に関する一般的な相談であれば、「居住地」の地域包括支援センターでも対応してくれると思います。

住所地特例について

住民票を移した場合、通常は異動先の市区町村が新たな「保険者」となりますが、下記の「住所地特例」となる場合には、例外として異動前の市区町村がそのまま「保険者」として扱われます。

住所地特例とは

住所地特例とは、住民票を他の市区町村に移した場合であっても、その異動先が「住所地特例対象施設」の住所である場合には、異動前の市区町村が「保険者」になる、という制度です。

この制度は、介護施設の設置数が多い市区町村に、財政負担が集中してしまうことを避けるために導入されました。

住所地特例対象施設

下記の施設が「住所地特例」の対象となります。

住所地特例対象施設の一覧
  • 特別養護老人ホーム
  • 介護老人保健施設
  • 介護療養型医療施設
  • 介護医療院
  • 有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者向け住宅(一部を除く)
  • 軽費老人ホーム
  • 養護老人ホーム ※このサイトでは扱っていません
  • ※「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「軽費老人ホーム」「養護老人ホーム」については、「地域密着型特定施設」に該当する場合は対象となりません。
  • ※入所期間が短めの施設(介護老人保健施設)では、住民票を置かせてもらえないケースもあるようです。
著者情報

高橋 永治(たかはし えいじ)

介護情報サイト「介護Ways」の運営者。

1996年、自身にとって初となるWebサイトを立ち上げ、98年からは企業向けのWebサイト制作サービスを開始。現在は企業サイトの運営管理、および複数の自サイトの運営管理を行っている。

親が認知症になってからは介護の世界に関心を持ち始め、介護保険制度について調べていくうちに「この複雑で分かりにくい情報を整理したい」という思いに駆られ、10ヶ月に渡る制作期間を経て2020年1月に介護Waysを公開。「簡潔に分かりやすく」がモットー。